西友の北海道・九州店舗売却:日本の流通・小売業界に迫る変化

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近年、イトーヨーカ堂の一部店舗を譲受して「ロピアが北海道に進出する」と報じられたことに続き、2024年4月には「西友がイオンに札幌全9店舗を売却する」とのニュースが流れ、国内の流通・小売業界が活気づいています。では、大手スーパーである西友を巡り、何が起こっているのか詳しく解説します。


北海道・九州の店舗網売却の背景

まず、西友が北海道と九州の店舗を売却した背景には、地域特性と競争環境が深く関係しています。2022年度の北海道内のスーパー売上ランキングは以下の通りです(帝国データバンク調べ):

順位 企業名 売上高
1位 イオン北海道 3,396億円
2位 コープさっぽろ 3,174億円
3位 アークス 3,116億円

このように、北海道内の小売業界はイオン、コープさっぽろ、アークスという三強が熾烈な競争を繰り広げており、その中で西友が260億円の売上をイオンに譲渡することは非常に大きな影響を及ぼします。

九州でも激しい競争

九州においても、同様の動きが見られました。西友の九州96店舗が、西日本でイオンと真っ向勝負を展開する**イズミ(ゆめタウン、ゆめマート運営)**に売却されると報じられ、地域の注目を集めました。

イズミは、九州・中四国エリアにおいてイオンに対抗する存在として有名であり、西友の売上約1,000億円弱を手中に収めることで、九州エリアでの影響力をさらに拡大することになります。

ウォルマートからの株式売却と投資ファンドの戦略

西友が北海道・九州からの撤退を決めた背景には、ウォルマートの株式売却が大きく影響しています。2000年代初頭、ウォルマートは西友を買収しましたが、2021年には65%の株式を投資ファンドKKRに、20%を楽天に売却しました。さらに2023年には楽天が持っていた株式をKKRに売却したため、現在西友の株式はKKRが85%、ウォルマートが15%を保有しています。

投資ファンドKKRが西友の大株主となることで、企業の事業価値を最大化し、将来的な売却を目指す経営方針が強化されました。つまり、西友の地域分割売却は、その一環として進められたものです。


西友の今後の動向

西友は、北海道と九州の店舗を売却後、本州に経営資源を集中させ、さらなる成長を目指す戦略を公表しています。

西友が現在展開している本州の店舗網は、特に首都圏で強力な存在感を持っています。以下は、関東の主要スーパーの売上を示した表です:

企業名 売上高
イオンリテール 1兆円以上
ヨークベニマル 約6,000億円
西友 約3,000〜4,000億円

これを見ると、西友が首都圏で果たす役割は非常に重要であり、売上3,000〜4,000億円の規模が業界全体の競争地図に大きな影響を与えることがわかります。

物流効率と事業再編

西友は北海道と九州を「飛び地」として切り離すことで、物流効率を大幅に改善し、残る本州事業の収益性向上を目指しています。特に関東地区に集中する135店舗は、西友の売上に大きく貢献しており、この地域での戦略が今後の業績を左右します。

また、南東北や長野といった地域についても、物流効率や市場特性を考慮した分離売却が今後の選択肢として浮上する可能性があります。


ファンドと小売業M&Aの背景

ファンドが小売業のM&Aにおいて買い手として登場する背景には、全国展開を行っている企業グループが少ないという事情があります。例えば、イオンやPPIH(ドン・キホーテ運営)が主なプレイヤーですが、地域ごとの事業譲渡には一定の制約があり、物流効率やシナジーを考慮した地域分割が必要になります。

ファンドはこのような条件下で、収益性の高い事業に再構築し、企業価値を向上させる役割を果たしているのです。


結論

西友の地域分割売却は、北海道や九州といった遠隔地からの撤退を意味するものの、これは事業戦略の一環であり、経営資源を本州に集中させる狙いがあります。今後は、本州内でのさらなる成長やM&Aを視野に入れながら、収益性を追求していくことが予想されます。

特に首都圏での競争が激化する中、西友の動向は業界全体に大きな影響を与える可能性があり、引き続き注目が必要です。

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