チケット転売問題に新展開:STARTO社の発信者情報開示請求とは

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高額転売が社会問題に――チケット転売の現状と法的対応

近年、チケットの高額転売が大きな社会問題となっています。特に、人気公演やアイドルグループのコンサートなどで定価をはるかに超える価格でチケットが転売されるケースが頻発しており、その被害は広範囲にわたっています。2019年には、このような不正行為を防止するために「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(通称「チケット不正転売禁止法」)が施行されました。それにもかかわらず、依然として高額転売の問題は解消されていません。

STARTO社所属アーティストのイベントでも高額転売が横行

特に問題視されているのが、チケット売買プラットフォーム「チケット流通センター」における高額取引です。STARTO社に所属するアイドルグループ「少年忍者」のイベントでは、2024年8月15日時点で2,901件の転売が確認され、その中には1枚あたり最高30万円で販売されているチケットもあります。さらに、10万円以上の高額出品が300件以上確認されており、アイドルの公演チケットが大きな利益を生む手段として悪用されています。

また、2024年で終幕が発表されている堂本光一さんの舞台「Endless SHOCK」でも、1枚60万円という非常に高額なチケットが出品され、実際に45万円で取引されているケースも確認されています。このような高額転売はファンの負担を増大させるだけでなく、正当な方法でチケットを手に入れたい人々にとっても深刻な問題です。

転売の手口が巧妙化――不自然に安いチケットの出品も

転売の手口もますます巧妙化しています。最近では、500円から1,500円という不自然に安い価格でチケットが出品されるケースが目立っています。これは、会場でQRコードを読み取って座席が発券される仕組みを悪用した手口です。転売者は複数のチケットを出品し、最も良い座席を高額で販売する一方で、視界が悪い席を安く売るという方法で利益を得ています。

実際に編集部でも「同時入場して全てのチケットを回収」「座席は当方が指定し、購入者は選択できない」といった不透明な取引が確認されています。これにより、購入者はチケットの価格に見合わない不利な席を押し付けられるリスクを負っています。

「チケット流通センター」の利用者が多い理由とは?

「チケット流通センター」は、1999年に個人間売買サービスとしてスタートし、プロ野球球団の公式リセールサイトとしても公認されている大手プラットフォームです。人気の理由は、購入者がチケットを受け取るまで代金が預けられる安全性や、個人情報を開示せずに取引ができる点、さらに当日まで売買が可能であることです。加えて、90%以上の出品者が公的身分証明書を提出しており、この厳格な仕組みが利用者の信頼を集めています。

しかし一方で、高額転売が頻繁に行われている場でもあり、出品者が価格を自由に設定できる仕組みが悪用されています。「チケット流通センター」側は、「転売防止には努めている」としながらも、出品価格の適正性については関与できないとしています。この対応には、多くのユーザーが不満を感じています。

STARTO社が日本初の情報開示請求へ

この状況を受け、STARTO社とヤング社は「チケット流通センター」を運営するウェイブダッシュ社に対し、転売チケット299件の出品者の発信者情報開示を求めました。これに対し、ウェイブダッシュ社は9月5日付で開示拒否の姿勢を示したため、STARTO社は東京地裁に「プロバイダ責任制限法」に基づく発信者情報開示請求を行う予定です。

今回のような、チケット転売をめぐる発信者情報開示請求は日本初のケースと見られ、業界に大きな影響を与える可能性があります。STARTO社の代理人を務める中島博之弁護士は「違法な転売行為が横行する中、ファンの権利を守るためにプラットフォーム側が責任を持つべきだ」と指摘しています。

リセールサイトを作ることは解決策になるのか?

チケット転売問題の議論が進む中で、頻繁に議論されるのがリセールサイトの必要性です。2023年には、大手テーマパークのチケット転売禁止条項が消費者契約法違反として争われた裁判がありました。この裁判では、リセールサイトがない場合にチケットをどう処理するべきかが問題となりましたが、裁判所は「転売禁止の合理性」を認めつつ、リセールサイトの開設にはコストがかかるため、その負担が消費者に転嫁される可能性を指摘しました。チケット価格の高騰を抑えるためには、単にリセールサイトを作るだけでは不十分であり、さらなる議論が必要です。

「チケット流通センター」の対応と今後の展開

「チケット流通センター」を運営するウェイブダッシュ社は、反復して業として高額転売を行っている出品者について対応する予定があるかについて、取材に対して期限内に回答を得ることはできませんでした。しかし、今後発信者情報開示請求が認められた場合、STARTO社はチケット不正転売禁止法違反として警察に被害を相談し、法的措置を検討するとしています。

今回の情報開示請求が認められれば、他の類似プラットフォームにも波及する可能性があり、高額転売問題に対する業界全体の対応が求められることになるでしょう。ファンの権利を守り、公正なチケット流通を実現するために、チケット売買プラットフォームがどのような対策を講じるのか、今後の動向に注目です。

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