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米国次第の日本株:直面する危うさの正体

株式投資

米国次第の日本株:直面する危うさの正体

日本株市場は、長らく米国経済の影響を大きく受けてきました。特に、円安米国株高が相乗的に作用して日本株の上昇を支えてきたのは周知の事実です。しかし、現在の状況を見ると、米景気の下降サイクルが始まることで、日本株に大きな圧力がかかる可能性が高まっています。この記事では、米国経済が与える影響を中心に、日本が直面するリスクを深掘りし、その危うさについて解説します。


日本株が上昇した背景:米国経済の追い風

日本は長年にわたるデフレを克服し、経済の自律性回復に向けたステップを踏み出してきました。その背景には、円安米国株高がありました。特に、米国の高金利政策がドル高円安をもたらし、これが日本株を後押しする形で相場が上昇してきたのです。

しかし、こうした日本株の上昇は、あくまで米国の好調な経済状況に依存している部分が大きいです。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために劇的な利上げを行い、これが超円安を引き起こしました。また、生成AIといった新たなテーマが米国株を押し上げ、その恩恵を受けた形で日本株も歴史的な高値を更新しました。


米景気下降がもたらすリスク

日本経済が米国依存から脱却しつつあるとはいえ、依然として米金利米国株の動向が日本株に与える影響は非常に大きいです。もし、米景気が下降サイクルに入り、米金利が低下すれば、日本株に大きなダメージを与える可能性があります。

  • 円高リスク:米金利が下がれば、**円高(ドル安)**が進行し、これが日本企業の海外収益を圧迫します。結果的に、日本株も圧迫され、特に輸出企業を中心に影響が広がるでしょう。
  • 米国株安リスク:米景気悪化に伴う米国株安が進行すると、世界的なリスクオフの流れが強まり、日本株もその影響を免れません。

9月18日に予定されているFOMC会合では、今サイクルで最初の利下げが行われる公算が高まっています。これに先駆け、8月にはドル/円と日本株が上昇トレンドから崩れ、売り逃げラッシュが発生しました。この事象は、米国経済に依存する日本株市場の脆弱性を浮き彫りにしたといえるでしょう。


日本株のリスク要因を理解する

米景気の動向が日本株に与える影響は非常に大きく、投資家はそのリスクを理解する必要があります。米金利が高止まりしている状況では、ドル/円の動きや米国株の相場が日本株に直結して影響を与える構造となっています。

  • 図1:米主要金利とドル/円

    出所:Bloomberg、田中泰輔リサーチ
  • 図2:米株3指数と日経平均(円建て・ドル建て)

    出所:Bloomberg

日本が直面するリスクとその対策

米景気の下降サイクルが始まれば、日本はさらなるリスクに直面します。以下に、米景気がどのように推移するかによる日本株への影響を整理します。

シナリオ1:米景気の軟着陸

米景気が鈍化しつつも、景気後退には至らないシナリオです。この場合、米金利はゆっくりと低下し、米国株は底堅さを保ち、日本株も安定した相場を維持できるでしょう。円高は進むものの、円高の進行は限定的であり、日本株への影響も比較的軽微です。

ただし、FRBが景気の軟着陸を確実にするまでには時間がかかるため、市場は気迷い相場となる可能性があります。日銀がその間に利上げを急ぐと、市場が動揺するリスクもあります。

シナリオ2:米景気の下降

米景気が本格的に後退すると、FRBは急速に利下げを行い、ドル/円も急落します。この場合、米国株の逆業績相場が発生し、日本株は円高と米国株安のダブルパンチを受けるでしょう。日銀は正常化に向けた利上げ計画を見送らざるを得なくなり、次の景気回復期まで政策の変更が難しくなるかもしれません。

シナリオ3:米景気の堅調維持

米景気が堅調で金利高止まりの状況が続く場合、ドル/円は堅調に推移し、米国株も底堅さを保ちます。この場合、日本株も堅調さを維持でき、日銀はこの間に利上げを進めることができるでしょう。しかし、次の景気悪化リスクに備える必要もあります。

  • 図4:米景気・相場サイクル

    出所:田中泰輔リサーチ

結論:日本株の未来を見据えて

米国経済の動向は、日本株市場に大きな影響を与え続けます。コロナ禍後の米国の景気堅調生成AIなどのテーマが日本株の追い風となりましたが、現在は米景気の陰り金利低下によるリスクが高まっています。米景気が急速に悪化し、円高が進行すれば、これまでの好循環が途絶える危険性があります。

日本はこの千載一遇のチャンスを活かし、デフレ心理の克服経済自律性の回復に向けた自助努力を最大限に進めるべきです。投資家も、相場の力学を理解し、冷静にリスクとチャンスを捉えることが求められます。円安や円高、株高や株安に惑わされることなく、長期的な視点での投資判断が重要です。

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